威勢のよさより憲法を指針に

●「この内閣に男は一人しかいないのですか!」

フォークランド領有をめぐるアルゼンチンとの開戦前夜の閣議でのこと、開戦に反対する閣僚に向かってサッチャー首相(当時)が言い放ったこの言葉は有名です。有名になって残るほど、この言葉が力を持ったのでしょうか。だとしたら怖い。威勢のいい言葉に人は惹かれやすいものです。

 威勢のいい言葉に動かされ(?)、このフォークランド戦争は3ヶ月にわたり、イギリスは256名、アルゼンチンは645名が戦死しました。負傷者はイギリス777名、アルゼンチン1048名。イギリスの世論はいまだにこの戦争を高く評価支持する声が多いそうです。しかし、親や妻にとってわが子や夫の命より価値の大きい島など、どこにあるでしょうか。

 

●わが国はいま尖閣諸島や竹島、北方領土の領有権で相手国との摩擦が大きくなっています。これに対して日本はどういう態度をとるべきか。それは既に憲法が指針を示しているのですから、迷うことはないと思います。仮に軍事挑発をしかけられても、仮にサッチャーのように「男はいないのか」とけしかけられても、これに乗じずにとことん言論による解決をめざすだけです。

 

●ただ、論を尽くし理を尽くして歴史的な正当性を主張しよう、国際世論に訴えようといっても、一方で「南京大虐殺はなかった」(河村たかし名古屋市長)などと日本の代表的な自治体の首長が言うようでは、あるいは戦犯を祀る靖国神社を参拝する閣僚(国土交通相、拉致問題担当相)いるようでは、なにが歴史的正当性だ、ご都合主義だと言われても文句が言えないのではないかと思います。

橋下大阪市長が昨日、「慰安婦強制の証拠はない。あるなら韓国にも出してもらいたい」と発言したようですが、そこまで人の痛みが分からないものかと暗澹たる気持ちになりました。逆の立場を想像できないのか。こんなでは反日感情に火がつくのはいたし方ありません。

 

●第一、日本の主権を脅かしているのはこれら諸島の領有権問題だけではありません。日本には米軍基地が130余もあり、騒音当たり前、強盗やレイプ事件は数限りなし、だけど捕まえられず、国際大学にヘリが墜落しても立ち入りさえ許されず、「ノーと言えない」オスプレイ配備問題をみても、日本全国土が米軍の使い放題です。既に主権を侵害され、数十年の実害が続いているのです。こちらこそ早急に根本的解決をしてほしい。