映画「ショージとタカオ」を観てきました

ショージとタカオ
「ショージとタカオ」のお二人

●21日、「ショージとタカオ」というドキュメンタリー映画を高田世界館で見てきました。いわゆる冤罪事件として有名な布川事件で逮捕された二人を追ったドキュメントです。無実の罪で収監され、仮釈放となって39年ぶりに「シャバ」に出てきた二人が、闘いを続けながら生活を築いていく姿をビデオカメラに収めたものです。映画のチラシを見たときから心惹かれてぜひ観ようと思っていましたが、期待を裏切らないよい映画でした。

 

●厳しい社会の現実に四苦八苦し、勤務先を変転するカッコ悪い二人の姿。だけど幸せをみつけるのがじょうずな二人。39年間の刑務所暮らしの様子がチラと垣間見られる場面がありました。いつも満点近くだった英語の答案の束を見せるタカオ。決められた時間以外に運動することを禁じられているものの、刑務官が目を離している隙に腹筋や腕立てをして体を鍛えていたと笑いながら話すショージ。

自由を奪われた長い年月を支えたのは、冤罪を晴らすという目的を明確に持っていたからなのでしょう。再審請求の結果を待つタカオが、「ヘタな結果が出るより、このまま支援者たちと毎月のように会合をもつ生活が続いたほうが…」と、ふと弱気を漏らすシーンがありました。いつしか、闘うことそのものが生きがいになり、支援者との交流が心の支えになっていたんだ。それもそうだよなア。他にどんな人生があった? そう思わずにいられませんでした。

でも、冤罪を晴らしたあとは、支援する側になって闘いを続けるという生き方もあるよ。だって、冤罪事件はまだ他にもあるし、これからも起こるだろうから。

 

●この上映会を主催したのは「国民救援会」という団体の「上越支部」です。

同会の歴史は古く、1928年に結成。戦前は主に治安維持法の弾圧犠牲者の救援活動を行っていました。

戦後は、弾圧事件のほかに、ショージとタカオのような冤罪事件や、国や企業の不正に立ち向かう人々を支援する活動を続けているそうです。現在も100件ほどの事件を支援しているとのこと。

支援事件を決定する羅針盤は、「日本国憲法と世界人権宣言」。『ショージとタカオ』の映画でも同会の方たちが支援者として何人も登場していましたが、この人たちはなんで赤の他人をここまで支えようとするのだろうと、尋ねてみたい気持ちにさせられました。

 

●でも、冤罪は他人事ではないというのは確かです。つい先日も、パソコンの遠隔操作を見抜けずに、警察が19歳の少年を逮捕してウソの自白を強要し、家裁で保護決定まで出たという事件が起こりました。

日本の裁判は真実を見つけることより、被告人が有罪か無罪か、有罪ならどういう処罰かを決定することが目的のようです。刑事裁判の有罪率は99.9%というから驚きです。逮捕されて密室の取調べで「認めればすぐ出してやる」などと誘導されてウソの自白をして起訴されれば、ほとんど有罪になってしまうということです。ショージとタカオもこの言葉にウソの自白をしてしまったのです。

 

●さらに一般人として驚くのは、集められた証拠がすべて裁判に提示されるわけではないこと。検察がどんな証拠を持っているかさえ、検察以外には分からないのです。被告人にとっては大変不利です。そこへきて、証拠として提出される自白調書が重要視されるわけですから、冤罪がなくなることはないと言ってよいと思います

 

●国民救援会がいま支援している事件に、「葛飾ビラ配布弾圧事件」があります。事件の概要は次のとおり(同会サイトより)

2004年、荒川庸生さんが葛飾区内のオートロックでないマンションのドアポストに、日本共産党の葛飾区議団だより、東京都議団ニュース、区民アンケートなどを配布していたところを、住居侵入として逮捕・起訴された。

ビラをポストインしただけで逮捕・起訴なんて、ありえない!業者はチラシを入れていたという反論もしたそうです。当然ながら、一審はビラ配布を処罰する社会通念は確立していないとして無罪判決。

ところが、二審で罰金5万円の逆転有罪判決を受け、09年11月、最高裁で上告棄却の不当判決。というのです。

 

●これが日本の政治状況。とても恐い。罰金5万円を払ってしまえば生活も経費も負担はそれだけで終わり、なのですが、そうはいかないでしょ? 

 『ショージとタカオ』でもタカオが言っていました。

「なんで39年も?と聞かれたけど、罪を認めれば10年くらいで(刑務所を)出られたんだよ。無罪だって言い続けたからこんなにかかったんだ」。

結果、こんな裁判おかしいゾという個人の闘いは、こんな社会おかしいゾという社会変革の意義をもつ闘いであることを「元チンピラだった」二人は自らの体験で学んでいき、支援者とともに堂々と闘いつづけることができたのだと思います。

ビラ配布で罰金――それがどんな小額であろうとも、払うのは大きな大きな、大きな社会的損失。そんな闘いを支援する唯一の国内組織である国民救援会の上越支部では、ただいま会員を募集中とのことです。